ケーキやクッキーなどのお菓子によく使われている膨張剤ですが、どんな成分が使われているのか知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、膨張剤の種類や成分、安全性について詳しく解説します。
膨張剤とは
膨張剤とはその名の通り膨張させる、つまり食品を膨らませる食品添加物のことです。
主に小麦粉を使ったお菓子に使われることが多く、膨張剤を使うことでやわらかくふんわりした食感のおいしいお菓子を作ることができます。
膨張剤の仕組み
膨張剤が膨らむ仕組みは「二酸化炭素(炭酸ガス)」にあります。
膨張剤を水分や熱と反応させて、二酸化炭素を発生させることにより、食品中に空気の穴を作り膨らむのです。
例えばホットケーキの場合、膨張剤により加熱中に生地の中にガスが発生し生地を持ち上げます。その状態で熱が加わっていくことで生地がかたまり、生地中に空気を含ませたままふんわりとしたホットケーキに仕上がります。
膨張剤を使わないとこの反応が起こらないので、生地の詰まった固いホットケーキに仕上がります。
膨張剤の3つの種類
膨張剤は作るものによって使い分けることが多く、主に3種類に分けられます。
重曹
重曹は炭酸水素ナトリウムのみで作られており、炭酸ソーダとも呼ばれています。
ホットケーキやまんじゅうなど、和洋菓子どちらにも使われており、昔から親しまれてきた膨張剤です。
水と熱により反応し二酸化炭素をつくりますが、すべてが反応せずにアルカリ性の炭酸ナトリウムが残るため、食品の色を黄色くしてしまったり、独特のアルカリ臭がすることがあります。
そのため色の濃い食品に使ったり、ベーキングパウダーと併用して使うことの多い膨張剤です。
膨張剤の役割以外にも、野菜のアク抜きや油よごれの掃除に使われることもあります。
ベーキングパウダー
家庭でお菓子作りをする方にとって一番身近な「ベーキングパウダー」も膨張剤の一種です。
先述した「重曹」の使いづらい部分(着色やアルカリ臭)をさまざまな成分を組み合わせることで改善しており、食品に対して使いやすくした膨張剤です。
具体的には、アルカリ性剤(重曹など)と酸性剤(ガス発生のコントロール)、分散剤(保存性の向上)を組み合わせて、食品の着色やアルカリ臭を抑えています。
さらさらした粉状で小麦粉とのなじみがよく、分散性に優れているので、お菓子作りに最適な膨張剤と言えるでしょう。
イーストパウダー
イーストパウダーは、炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムを混ぜ合わせた膨張剤で、色をつけたくない蒸し菓子や、和菓子によく使われています。
ベーキングパウダーよりも生地をふくらませる力は強いです。
しかし、イーストパウダーは水と熱に反応することで、アンモニウムを生成してしまうため、独特の香りがします。
そのため、単体ではなく重曹やベーキングパウダーと組み合わせて使われることの多い膨張剤です。
膨張剤の主な成分
具体的に膨張剤にはどんな成分が含まれているのか、主に使われている成分について解説します。
炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウムは重曹の成分で、水と熱に反応し二酸化炭素をつくります。
膨張剤のガス発生源としての役割を持ち、ベーキングパウダーにも使用されています。
アルカリ性であることから、独特の臭いと風味が特徴です。
グルコノデルタラクトン
グルコノデルタラクトンは膨張剤(ベーキングパウダー)の酸性剤として使われます。
炭酸水素ナトリウムがガスを発生しすぎるのを抑える、コントロール剤としての役割を果たします。
酸性剤により、ガスの発生をコントロールすることでアルカリ性の独特の臭いの調整や着色を防いでいます。
硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)
硫酸アルミニウムカリウムも酸性剤として使われる成分です。
水酸化ナトリウムとの反応が緩やかに持続的に続くことが特徴です。
膨張剤のほかにも色止め剤や品質安定剤としても使われますが、みそへの添加は厚生労働省によって禁止されています。
その理由は、味噌の変色を防ぐと劣化に気づきにくくなることや、アルミニウム摂取量の規制があるからです。
膨張剤の安全性は?
炭酸水素ナトリウムを主原料として、品質向上のために酸性剤なども複合している膨張剤の安全性について解説します。
膨張剤は食品添加物であり、安全性が認められている
膨張剤は食品添加物として厚生労働省に使用が許可されている成分です。
食品添加物に認可されるためには、発がん性試験や、次世代試験などさまざまな視点からの実験・分析が行われ、安全性を確認しなければなりません。
そのため、食品添加物として使われている膨張剤に関しては安全性が高いと言えるでしょう。
小児のアルミニウム(ミョウバン)摂取には注意が必要
膨張剤で1つ気をつけたいのが、小児の膨張剤過剰摂取の危険性です。
膨張剤に配合されることのある硫酸アルミニウムカリウムには「アルミニウム」が含まれています。
アルミニウムは、過剰摂取することで腎臓やぼうこうへの影響が認められている成分で
、人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量(暫定耐容週間摂取量)が設定されています。
アルミニウムの暫定耐容週間摂取量は「体重1kg、1週間当たり、2mg」に設定されており、普通の食生活で大人では超えることのない量ですが、体重の軽い小児ではアルミニウムを多く含む食品を取りすぎると許容量を超えてしまう可能性が高くなります。
日本国内での摂取量調査の結果では、小児の場合、摂取量の多い5%の人が許容量を超える可能性があることがわかっています。
ホットケーキや蒸しパンなどは子どもの好きな食べ物でもあるため、食べないようにするのは難しいかと思います。
そのため、日常的に食べる場合は「アルミフリー」や「ミョウバン不使用」などと記載されたバーキングパウダーを使う、市販の膨張剤使用の製品の摂取頻度を少なくするなどの工夫をすると良いでしょう。
まとめ
膨張剤は、食品を膨らませふんわりおいしい食感を作り出すのに必要な食品添加物です。
安全性については、基本的に気にする必要はありませんが、子どもに対しては少し注意が必要です。
ベーキングパウダーなど身近にある膨張剤の正しい情報を知り、上手に食生活に取り入れてくださいね。
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